マシュー・サイドの『失敗の科学』を会社に応用するには

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最近、マシュー・サイドの『失敗の科学』を読みました。失敗から学ぶ組織と、失敗から学ばず失敗し続ける組織について、詳しく分析をされています。

航空会社と医療団体は、ともに人命にかかわる極めて重要な組織ですが、前者が事故の確率を極めて小さくした要因と、後者が医療事故というものがいっこうに減らない要因についての対比が興味深く感じました。

航空業界が、前世紀の前半に事故が多かった理由として、

・完全主義
・厳しい上下関係

の二つを挙げています。航空会社はこの要因を分析して、適切な仕組みづくりを行うことで、奇跡的な事故率の低さを実現したそうです。

医療業界の方は、厳しい上下関係といった要因に加えて、隠蔽体質という要因もあり、失敗から学んで次にいかに活かすかよりも、いかになかったことにするかに力を入れてしまったことで、事故率が高止まりしてしまったとのことです。

マシュー・サイドは、失敗から学べる究極のツールとして、『事前検死』を推奨しています。これは、心理学者のゲイリー・クラインが提唱した方法で、プロジェクトが終わったあとではなく、実施前に行う検証です。

あらかじめプロジェクトが失敗したと想定し、「なぜうまくいかなかったのか?」をチームで事前検証していくものです。失敗していないうちからすでに失敗を想定し学ぼうとするので、費用対効果も高いです。また、チームのメンバーは、プロジェクトに対して否定的だと受け止められることを恐れず、懸念事項をオープンに話し合えるメリットもあります。

この方法は、行動経済学者のダニエル・カーネマンなどにも支持されているようです。

『事前検死』の他にも、『マージナル・ゲイン』や『リーン・スタートアップ』、『RCT』などの手法もあり、状況に応じて使い分けることで、学習できる組織を作っていけたらいいですね。