マズローの欲求5段階説は間違い

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組織や経営において、たびたび引用されるのがマズローの欲求5段階説です。
これは、人間の欲求は、低次の生理的欲求から出発して、段階を経て高次の自己実現の欲求へとたどり着く、とした理論です。

この理論を基にして、組織や経営、マーケティングを行っている企業も多いでしょう。

しかし、この理論は近年の科学的な研究で否定されています。イリノイ大学のエド・ディーナーは、6万人を集めて調査をしたところ、マズローの理論が当てはまっていないことがわかりました。

人間の欲求には、下位と上位の区別は存在せず、生理的欲求を満たしていなくても、自己実現欲求や承認欲求を望む人間など、さまざまだったというわけです。
確かに、芸術家タイプの人であれば、生理的欲求は満たされていないのに自己実現欲求を望むケースはしばしばあります。プロスポーツ選手の中には、安全欲求や社会的欲求が乏しいのに、承認欲求を望んでいるケースをよく見かけます。

これは芸術とかスポーツのような特殊な仕事のケースだけなく、一般の会社員にも当てはまります。人類のほとんどは合理的な生き物ではありませんし、皆が皆堅実というわけでもありません。

したがって、マズローの話を持ち出して、社員の教育を行っても、社員の心に刺さらないケースも多いと思います。

また、自己実現に関するサービスを提供する場合でも、必ずしも富裕層をターゲットにする必要はなく、他の4つ欲求を満たしていない中間層をターゲットにしてもよいということになります。

大事なのは、偏見や思い込みで欲求を決めつけるのではなく、各人の欲求を見極めていくことだと思います。

マズローの理論とは別の視点で見渡すと、事業経営の可能性も広がるのではないでしょうか。