扶養控除の範囲のこと

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年末が近づいてくると、多くなるご相談に、扶養控除の範囲があります。

扶養控除には税制上のものと社会保険上のものがあり、ごちゃ混ぜにして考えている方もときどきいらっしゃいます。

 

12月になると、パートで働いている方の中には、「扶養の範囲でいたいから」という理由で、かなりの日数を欠勤される方もいます。

 

社会保険上の「扶養の範囲」は、月単位で判断される(または直近3か月の給与の平均を12倍して130万円未満であること)ので、会社との雇用契約がどうなっているかが重要となります。その雇用契約(月収)が108,333円以下の内容であれば、「扶養の範囲」と認定される可能性は高くなります。

 

突発的・例外的な事情で会社から残業を命じられたことで月収が108,333円を超えてしまったとしても、必ずしも扶養から外さないといけないわけではありません。ただし、いくら雇用契約書が月収108,333円以下の内容になっていたとしても、実態として毎月108,333円を超える労働している場合は実態の方で判断されることになります。

 

税制上の扶養は非課税分の通勤手当を年収に含めませんが、社会保険上の扶養は通勤手当は収入に含まれますので、この辺りも間違えやすいところとなっています。

 

また、社会保険上の扶養は収入要件だけではなく、所定労働時間の要件もクリアする必要があり、会社が501人以上の場合は、扶養の範囲の要件がさらに変わってきます。

 

労働者の家庭環境等を配慮してあげるためにも、扶養の範囲の要件についてはしっかりとおさえておきたいところです。

慰労金は賞与に入るのか

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会社が労働者に支払うものとして、賃金や賞与、退職金その他、様々な名称のものがあります。では、3年以上在籍した技能実習生などに支払う慰労金は、社会保険上のどれに該当するのでしょうか。

 

慰労金が労働の対価ではなく、恩恵的なもので、勤続功労金のような性質の場合、労働保険上の賃金または賞与にあたりません。したがって、雇用保険料は引かなくてもよいことになります。また、労災保険料もかかりません。

 

厚生年金保険・健康保険上についても、労働の対価ではなく永年勤続に準ずる一時金であれば、賞与には該当しません。したがって、この場合の慰労金には、厚生年金保険料や健康保険料がかからないことになります。ただし、名称が何であれ、毎年払うようなものは賞与に該当します。

 

ご参考まで。

出産や育児に関する給付金の注意点

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一定の要件を満たすと、雇用保険や健康保険からさまざまな給付金が労働者に対して支給されますが、出産や育児に関する給付金について、今回は述べてみたいと思います。

 

育児休業給付は、育児休業終了後の職場復帰を前提とした給付金のため、最初から退職を予定している場合は、育児休業給付の支給対象となりません。

 

受給要件として、育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上あることが必要です。この場合、育児休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とカウントします。

 

一方、出産手当金は、出産日以前42日から出産日の翌日以降56日までの期間で会社を休んだ期間が対象です。育児休業給付と違って、2年間に被保険者期間が12か月以上といった要件はなく、

 

①健康保険の被保険者であること

②妊娠4か月以上の出産であること

③出産のため仕事を休み、給与の支払いがないか支払額が出産手当金より少ないこと

 

の三つを満たせば、支給の対象となります。

 

では、出産や育児の途中で、関連会社などに転籍出向するケースの場合はどうなるでしょうか。

 

育児休業給付については、一日の空白期間もなく、関連会社などに転籍出向する場合、上記の受給要件を満たしているのであれば、支給の対象となります。

 

出産手当金については、被保険者期間の要件はないわけですから、上記の要件を満たしていれば、転籍出向しても支給の対象となります。

 

ちなみに、育児休業給付は、一定の要件を満たすと、2歳まで延長が可能となります。最近は、1歳6か月や2歳までの延長が少しずつ増えてきているので、これについても注意をしておきたいところです。

定年再雇用のときの同日得喪の仕組みとは

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先日、定年再雇用のときの同日得喪の手続を行ってきたのですが、同日得喪の制度について知らない方も結構いるかもしれませんので、少し述べてみたいと思います。

 

社会保険の標準報酬月額は、取得時に決定したあとは、定時決定や随時改定によって、変更されます。随時改定については、固定的賃金が一定以上の変動があってから3か月後のタイミングとなりますが、定年の翌日に再雇用される場合は、再雇用された月から再雇用後の給料の標準報酬月額に変更となります。これを同日得喪といいます。

 

同日得喪の対象者は正社員だけでなく、厚生年金保険等の被保険者であれば、アルバイトも対象となります。

 

また、定年のときだけではなく、定年後の有期労働契約を更新するときにも対象となりますし、役員も利用可能です。

さらに、70歳になると健康保険のみの加入となりますが、健康保険のみで同日得喪を行うこともできます。

 

手続きとしては厚生年金保険等の被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を事業主の証明等の添付書類と一緒に事務センターに提出します。

 

定年後に給与を見直す会社様は少なくありませんが、タイミングによっては、同日得喪を利用できることになります。60歳以上の在職老齢年金は、標準報酬月額と標準賞与額をもとに算出する総報酬月額相当額がかかわってきますので、在職老齢年金も考慮に入れながら、同日得喪も利用して、会社の負担を軽くしていきたいものです。

時間単位有給休暇で注意することって何?

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今年の4月以降に、新規の顧問契約を4社結ばせていただいたのですが、そのうち1社から「時間単位有給休暇の導入を考えたい」とのご相談がありました。

 

「管理が大変になりますけど、大丈夫ですか?」と私は伝えたのですが、「大丈夫です。」とのことでしたので、時間単位年休の導入に関するお手伝いをさせていただきました。

 

時間単位有給休暇の注意点を以下にまとめてみたいと思います。

 

まず基本的なことですが、労使協定の締結が必要ということです。労使協定で定める内容は以下のとおり。

 

①対象労働者の範囲

②時間単位有給休暇の日数

③時間単位有給休暇1日の時間数

④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数

 

また、労使協定と同様の内容が就業規則に規定されていることが必要です。時間単位年休の導入をしている企業様の中には、就業規則への規定を忘れているケースが意外と多いと思います。

 

さらに、毎年、時間単位で取得できる有給休暇は5日以内と定められていることも注意が必要です。では、前年度からの繰越分がある場合はどうしたらいいでしょうか。

 

時間単位有給休暇の上限は、前年度の繰越分も含めて5日以内に限られています。前年度の繰越が8日分あった場合、8日+5日で13日分が時間単位有給休暇として取得できるわけではありませんので、注意が必要です。

 

そして、「1日の取得時間数の制限を設けること」や「所定労働時間の途中に取得できないようにすること」、「取得できない時間帯を設けること」もできないことになっています。

 

時間単位有給休暇は、通常の年次有給休暇よりも注意すべき点が多いため、社内で時間単位有給休暇制度の運用ルールをきちんと伝えておくことが大切となります。

同一労働同一賃金のこと

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同一労働同一賃金については他の書籍・資料で確認済でしたが、念のため、水町勇一郎氏の著書も読了しました。

 

水町勇一郎氏は東大教授で、働き方改革実現会議の構成員をされている方です。

 

同一労働同一賃金は、ドイツやフランスですでに行われている取組ですが、日本では、大企業が2020年4月~、中小企業が2021年4月~施行となります。

 

ドイツやフランスでは、「均等」待遇のみが対象ですが、日本では、「均等」待遇だけでなく、「均衡」待遇の確保も対象となります。つまり、日本の方がドイツやフランスよりも厳しい内容となっています。

 

「均等」待遇とは前提が同じ場合に同じ待遇を求めること、「均衡」とは前提が異なる場合に前提の違いに応じたバランスのとれた待遇を求めることです。

 

同一労働同一賃金は、「有給休暇義務化」や「残業時間上限規制」と比べて、より高度な内容となっているため、はたして企業総務の現場レベルで対応していけるのだろうかと、ふと思いました。

 

とはいえ、施行される以上は対応することが求められますから、社労士事務所として精一杯、支援をしていこうと思う今日この頃です。

外国人雇用のこと

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先週、事務所の5S活動をしていたら、監理責任者等講習の修了証書が出てきました。

外部監査役の仕事を引き受けている関係で、以前に受講したものです。

(修了認定テストは100点満点中100点でした)

 

最近、外国人雇用(技能実習生受け入れ)を検討しているというクライアントが増えてきており、時代の流れを感じています。

 

外国人雇用には様々な注意点があり、労働問題が発生する確率も高くなっています。

 

言語の壁、失踪、国民性、習俗文化、業種とのマッチングなどについても検討する必要があります。

 

日本の労働人口の状況を考えると、外国人雇用というのが今後の課題の一つになっていくかと思います。

有給休暇の時季変更権を行使できるのはどんなとき?

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有給休暇は申請を拒否することはできませんが、取得する時季を変更することは認められています。ただし、いつでも時季を変更できるわけではなくて、「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです。

 

そのように顧問先にお伝えすると、「じゃあ、事業の正常な運営を妨げる場合ってどんな場合なの?」という質問がしばしば返ってきます。

 

「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、具体的には、次のとおりです。

 

1.有給休暇を取得する人以外の社員では、行うことができない重要な業務をしなければならないとき。

 

2.有給休暇取得者がその日にたくさんいて、代替要員の確保ができないとき。

 

3.その日に研修の実施がある、または出張業務があるとき

 

4.シフト制の会社の場合で、シフト変更を調整してみたが代替要員の確保ができないとき。

 

5.「その日にイベントセールがある」など、特にその日に行わなければならない業務があるとき。

 

上記のような事情がなく、単に業務が忙しいという理由だけでは、有給休暇の変更は認められないことになっています。

 

上記1~5の事情がある場合は、強制的に変更が可能ですが、実務上は強制的に変更するよりも、話し合いによって変更する方がよいと思われます。

過半数代表者の選出はどうやってすればいいの?

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2019年4月から過半数代表者の要件がより明確化されました。そのため、過半数代表者に関する選出方法に関するお問合せも増えています。

 

全員が集まる朝礼や会議の場で、あらかじめ立候補者をつのり、従業員の投票等により決定するのが一般的です。その際、注意しなければならないのは、労働基準法に規定する管理監督者は、過半数代表者になることができない、ということです。

 

ただし、管理監督者が労働者であれば、過半数代表者を選出するための投票権は、管理監督者にも与えられています。

 

また、パートやアルバイトを含む全労働者に投票権は与えられています。

 

投票の際に風邪等で休んだ労働者がいる場合は、過半数代表者の得票が過半数を上回って選出されたのであれば、その選出は有効とされます。

 

そして、この選出は事案ごとに行うこととされています。

有給休暇の一斉付与で起算日を変更した場合のポイントとは

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今年度から、有給休暇の義務化が始まったため、この機会に有給休暇の基準日を統一して管理をしたい、という相談がとても増えています。

この場合、二つの方法があります。

※基準日を統一する前に付与された日が2019年5月1日とし、2019年9月1日に基準日を統一したとします。

一つは、比例按分を行わない場合。2019年5月1日から1年間と、2019年9月1日から1年間のそれぞれの期間で、年5日間取得する必要があります。管理がとても大変です。

 

二つ目は、比例按分を行う場合。2019年5月1日から1年間と2019年9月1日から1年間の期間を合算して、その期間内で按分した日数の年休を取得すればOKです。

具体的には、2019年5月1日~2020年8月31日は16か月です。

16か月÷12×5日=6.666..日

2019年5月1日~2020年8月31日の間に7日与えれば大丈夫です。

 

ある程度、社員の人数が増えてくると、個別に付与するより一斉に付与した方が管理は楽ですので、ぜひ参考にしてみてください。